日本の森・吸収力レポート

日本の森林吸収源対策を後押しする国の支援制度:企業活用の可能性

Tags: 森林吸収源, CSR, 企業連携, 補助金, 国の政策, 脱炭素, 林業

はじめに:日本の森林吸収源対策と国の役割

地球温暖化対策において、森林による二酸化炭素(CO2)の吸収は重要な要素です。日本は国土の約7割を森林が占めており、これらの森林が持つ吸収機能は、国の温室効果ガス排出削減目標達成に不可欠な貢献をしています。パリ協定の下、日本は2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減することを目指しており、この目標達成には森林吸収量の確保も含まれています。

森林の炭素吸収能力を最大限に引き出すためには、適切な森林整備(植栽、下刈り、間伐など)が不可欠です。これらの活動は広大な面積に及び、多大なコストと労力を伴います。そのため、国は森林・林業基本計画に基づき、森林吸収源対策を推進するための様々な支援制度や政策を講じています。

本記事では、日本の森林吸収源対策に関連する国の主な支援制度や補助金に焦点を当て、企業の皆様がこれらの制度をどのように活用し、自社のCSR活動や脱炭素戦略に結びつけることができるのかについて解説します。企業の持続可能な経営や社会貢献の観点から、国の支援制度の理解は重要な示唆を与えるものとなるでしょう。

日本の森林・林業に関する主要な政策フレームワーク

国の森林吸収源対策は、「森林・林業基本法」に基づき策定される「森林・林業基本計画」によって方向づけられています。この基本計画は、概ね10年〜15年後の日本の森林・林業の姿や目指すべき方向性、そしてそれを実現するための施策を定めるものです。現在の計画においても、地球温暖化防止のための森林吸収機能の発揮は重点目標の一つとして掲げられています。

また、地球温暖化対策推進法に基づき定められる「地球温暖化対策計画」においても、森林吸収目標の達成に向けた取り組みの重要性が明記されています。これらの上位計画に基づき、具体的な森林整備や木材利用、研究開発、人材育成などを支援するための多様な施策が展開されています。

企業が森林吸収源対策に関わる上で、これらの国の政策フレームワークを理解することは、自社の取り組みが社会全体の方向性とどのように合致しているのかを把握する上で役立ちます。

森林吸収源対策に関連する主な国の支援制度・補助金

国の支援制度は多岐にわたりますが、企業のCSR活動や脱炭素戦略との連携が考えられる主なものをいくつかご紹介します。

  1. 森林整備に関する補助金:

    • 造林、下刈り、間伐といった森林の育成・保全にかかる費用の一部を補助する制度があります。これらの補助金は、森林所有者や林業経営体が主な対象となりますが、企業が所有する社有林の整備や、地方自治体などと連携して取り組む森林保全活動において活用できる可能性があります。
    • 特に、間伐は成長段階の森林の炭素吸収能力を高めるために重要であり、その実施に対する支援は、森林吸収量維持・向上に直結するものです。
  2. 木材利用促進に関する支援:

    • 建築物や公共事業における木材利用を促進するための支援制度があります。国産材を利用することは、伐採後の森林の再造林を促進し、新たな森林の成長による炭素吸収を促すことに繋がります。
    • 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に基づき、国や地方公共団体が率先して木材利用を進めており、これに合わせて民間における木材利用を支援する補助金や普及啓発活動も行われています。企業がオフィスビルや工場建設、内装に国産材を使用する際に、これらの支援制度を活用できる可能性があります。
  3. 林業のスマート化・技術開発への支援:

    • 効率的かつ安全な林業を実現するための新たな技術開発や、ICTなどを活用したスマート林業の導入に対する支援が行われています。例えば、ドローンによる森林調査や高性能林業機械の導入などが挙げられます。
    • 企業の持つ技術やノウハウを林業分野に応用する際の共同研究開発や、林業分野への新規参入企業に対する支援策が考えられます。
  4. 森林環境税・森林環境譲与税:

    • 森林整備に必要な地方財源を安定的に確保するため、2024年度から国民一人当たり年間1,000円を徴収する森林環境税が導入されました。この税収は、森林環境譲与税として、適切な森林整備を促進するために市町村や都道府県に譲与されます。
    • 譲与された資金は、森林所有者への支援や、林業の担い手育成、木材利用の促進、国民参加の森林づくりなどに活用されます。企業は、自治体が進める森林環境譲与税を活用したプロジェクトに連携・参画することで、間接的に森林吸収源対策に貢献し、地域社会との連携を深めることができます。

企業が国の支援制度を活用・連携する可能性

企業のCSR担当者が、これらの国の支援制度を自社の活動にどう組み込めるか、具体的な可能性を考えてみましょう。

支援制度活用のメリットと注意点

国の支援制度を活用したり、関連プロジェクトに連携したりすることには、企業にとって様々なメリットがあります。

一方で、注意すべき点もあります。

まとめ:企業と国の連携による森林吸収源対策の推進

日本の森林が持つ炭素吸収能力は、国の脱炭素目標達成に不可欠な要素であり、その維持・向上には適切な森林管理が欠かせません。国は、この森林吸収源対策を後押しするために、多様な支援制度や補助金を用意しています。

企業がこれらの国の支援制度を理解し、自社のCSR活動や事業戦略に組み込むことは、単にコストを削減するだけでなく、環境負荷低減、地域社会への貢献、企業価値向上といった多面的なメリットをもたらします。社有林の管理、自治体との連携プロジェクト、国産材の利用促進など、企業が関わる可能性は複数存在します。

これらの制度は常に更新されるため、最新の情報は林野庁や各地方自治体のウェブサイトなどで確認することが重要です。国の支援を賢く活用しながら、日本の森林吸収源対策に貢献することは、企業の持続可能な未来に向けた重要な一歩となるでしょう。本記事が、企業の皆様が森林吸収源対策への貢献を検討される上での一助となれば幸いです。