日本の森・吸収力レポート

企業森林保全活動の費用対効果:CSR担当者が知るべき測定・報告のポイント

Tags: 森林保全, CSR, 費用対効果, 効果測定, CSR報告

企業CSRにおける森林保全活動の重要性と効果測定の必要性

近年、企業の社会的責任(CSR)活動の一環として、森林保全への関心が高まっています。気候変動対策としての炭素吸収源としての機能はもちろんのこと、生物多様性の保全、水源涵養、地域社会との連携強化など、森林が持つ多面的な機能に企業が貢献する意義が広く認識されるようになってきています。

しかしながら、CSR活動として森林保全に取り組む際、その効果をどのように測定し、投資に見合う価値があるかをどのように説明するかは、多くのCSR担当者にとっての課題となります。活動の成果を客観的に示し、ステークホルダーに対して透明性を持って報告することは、CSR活動の信頼性を高め、さらなる投資や参加を促す上で不可欠です。

本記事では、企業が実施する森林保全活動について、その効果をどのように測定し、費用対効果をどのように捉え、そしてCSR報告でどのように記述すべきか、そのポイントを解説します。

森林保全活動がもたらす多角的な効果

企業による森林保全活動の効果は、炭素吸収量に留まりません。多様な効果を理解することが、活動の意義を正確に測定・報告するための第一歩となります。

これらの効果のうち、炭素吸収量のように比較的定量化しやすいものもあれば、地域活性化や従業員エンゲージメントのように定量化が難しい、あるいは評価に時間がかかるものもあります。

効果測定の課題と具体的なアプローチ

森林保全活動の効果を測定することは、活動内容や対象とする森林、目的によって多様なアプローチが考えられます。すべての効果を厳密に定量化することは困難な場合が多いですが、可能な範囲で客観的な指標を用いることが重要です。

1. 炭素吸収量の測定

2. 生物多様性の測定

3. その他の効果の測定・評価

重要なのは、活動の目的や内容に合わせて、無理のない範囲で、かつ客観性を保てる指標を選択し、継続的に測定・記録することです。

森林保全活動の費用対効果をどう考えるか

CSR活動としての森林保全の費用対効果を考える際には、単なるコスト削減や直接的な収益に繋がる経済的指標だけでなく、非財務的な価値や長期的な視点を含めることが重要です。

1. 費用の把握

活動にかかる費用を正確に把握します。これには以下のようなものが含まれます。

2. 効果の価値評価

費用に対して得られる「効果」をどのように価値として捉えるかです。

特に非経済的価値の評価は困難を伴いますが、近年はTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の議論が進むなど、自然資本や生物多様性が企業活動にもたらすリスクと機会、そして価値を評価・開示しようとする動きが加速しています。すべての効果を金額に換算できなくても、活動によって守られた(あるいは創出された)自然資本の量や質的な変化を明確に説明することが、非財務的な価値を示す上で重要となります。

3. 報告と社内外への説明

測定した効果と把握した費用に基づき、ステークホルダーに対して分かりやすく説明します。

測定された効果が目標に達しなかった場合でも、その原因を分析し、今後の改善策と共に正直に報告することが、信頼性維持のために重要です。また、第三者機関による検証を受けることも、報告の信頼性を高める有効な手段です。

まとめ:戦略的な森林CSR活動へ向けて

企業が森林保全活動に取り組むことは、気候変動対策への貢献だけでなく、生物多様性保全や地域社会との共生など、多様な価値を創出する機会となります。これらの活動を単なる費用ではなく、将来への投資として捉え、その効果を可能な限り客観的に測定し、費用との関係性を説明できるようにすることは、CSR活動の質を高め、社内外からの評価を高める上で不可欠です。

効果測定には様々な手法があり、すべての効果を定量化するのは難しい場合もありますが、活動の目的やリソースに応じて最適な方法を選択し、継続的に実施することが重要です。そして、測定結果を誠実に報告することで、ステークホルダーとの信頼関係を構築し、より多くの共感と協力を得ることができます。

CSR担当者としては、活動の企画段階から効果測定と報告の計画を組み込み、専門部署(環境部門、広報部門、経理部門など)や外部機関との連携を密にすることが成功の鍵となります。費用対効果の視点を持ち、戦略的に森林保全活動を推進することで、企業価値の向上と持続可能な社会の実現に貢献できるでしょう。